福島の復興はどのように進められているのか?アトックス社に聞く

2011年3月11日に起きた東日本大震災は、三陸沖を震源とした巨大地震で揺れが大きかったことに加えて津波が海岸線に押し寄せたことにより各地に大きな被害が出ました。

特に被害が大きかったのが岩手、宮城、福島の三県であり、その中でも福島県は、津波によって原発の電源が失われたことでメルトダウンという歴史的に見ても他にはない種類の事故が発生しました。

そのために、従来の大地震とは違って周辺の住民は放射能の脅威から逃れるために、家を出て避難せざるをえませんでした。

アトックスも参考

 

⑴原発事故が住民にもたらした影響

地震・津波の被害だけであれば、復興をするためには瓦礫をどかし新しい家やマンションを建てていけば次の段階へと進めます。

しかし原発事故が起きたために、計画的避難区域及び警戒区域に指定された地域の住民は、放射線量が低くなるまでは家に戻ることができません。

放射線量を下げるための除染を行い、徐々に計画的避難区域・警戒区域の解除が進んでいますが未だに家に戻れない人が数多く出ました。

そういうことを踏まえて、福島の復興というのは、どのようなことをやってきたのか、そしてこれからやっていくのかを取り上げてみましょう。

復興では、いくつもの作業が同時に行われています。

まず放射線の影響を下げるための除染をしつつ、地震・津波で破壊された建物の撤去、土砂崩れを起こしている崖の補修などをやります。

 

⑵避難生活が長引くほどに心に負った傷は深くなる

県内の空間放射線量(空気中の放射線量)は、除染をしてきたおかげで、地震が起きた直後に比べて格段に低い数値に抑えられています。

現在では、帰宅困難地域以外での除染作業はすべて完了しました。

それから被害を受けた建物を壊したままでは、避難した住民は戻れません。

ですから病院や学校、商業施設などを充実させています。

もちろん、水道やガスと言ったインフラについても復旧工事を行い、鉄道や道路なども帰宅困難地域を除き工事が完了しつつあります。

それから、家を出て暮らさなければいけない避難者に対しては、生活ができるように県営住宅を提供したり生活再建に必要な情報を提供するための拠点が設けられています。

また、避難生活が長引くほどに、心に負った傷は深くなりますから、心のケアも欠かせません。

 

⑶放射線は数十年程度ではその影響をゼロにすることは不可能

このように国が福島県を復興させるためにいろいろと努力をしているのですが、なかなか解決できない問題もあります。

放射線というのは数十年程度では、その影響をゼロにすることは不可能です。

そもそも、原発の内部には人が入ることが難しく、メルトダウンを起こした原子炉から燃料の取り出しを始めたくらいです。

このような状態では帰宅困難地域の住民は、いつになったら家に戻れるのかわからず、除染が終わり新しい家で暮らし始めた地域の住民、そして震災が過去の出来事になりつつある他県の人たちから取り残されていきます。

若い世代の人であれば、東京などに行って新しく仕事を見つけて新生活を始めることもできるでしょう。

ですが、年金を頼りにしている高齢者になると今から自立するというのは難しいですから、なおのこと取り残されます。

原発の後始末をすぐに終わらせるのは困難かもしれませんが、避難生活を送るしかない人々を国や県が支え続ける事が必要です。

 

⑷風評被害が完全には消え去っていない問題

もうひとつ、福島の復興を邪魔する原発事故を原因とした風評被害が、完全には消え去っていません。

世界を見れば未だ農林水産品が放射能に汚染されているものだという認識を抱いている人は少なくないです。

実際にはそういった農林水産物を出荷するにあたっては、世界でもっとも厳しい検査を行って安全性を確認しています。

なので、食べて何らかの健康被害が出る恐れはありません。

そこでネガティブなイメージと事実のギャップを埋めるために、県や各種団体が日本各地で安全性をアピールするイベントを実施したり、知事が海外でトップセールスするなどの努力を試みています。

そういった努力が実を結び、徐々に売上の増加や輸入規制の解除など少しずつ変化しつつあります。

 

⑸ソフトボールと野球は東京ではなく福島で開催される予定

東日本大震災から月日が経過し、このように状況が刻一刻と変化しつつある中で2020年に行われる東京オリンピック・パラリンピックのもたらす影響が注目されています。

というのもこのオリンピック・パラリンピックでは「復興五輪」という言葉も使われているからです。

ソフトボールと野球は、東京ではなく福島で開催される予定です。

これは、オリンピック・パラリンピックを見るため、そして競技に参加するために日本を訪れる諸外国の人々に、震災の被災地の現在を知ってもらおうという狙いがあります。

東日本大震災が起きた直後に比べれば、2020年の状況は大きく改善されています。

実際に見てもらうことは、ネガティブなイメージを払拭できる良い機会にもなります。

そしてこの機会で他都道府県に住む人達も、正しい情報に触れて自分にできることを考えれば被災した人たちをより応援できます。

たとえばお米などの農産物を買ってみたり、旅行をするときの目的地として候補に入れるというだけでも十分です。

普段と同じ生活をしていく中で、少し意識を変えるだけで経済的な支援ができます。

 

最終更新日 2025年4月29日