音楽大学の専攻内容について
音大と聞くと、『小さいころから音楽を習ってきた、お嬢様・お坊っちゃまの集まり』というようなイメージを抱かれる方も多いのではないでしょうか。
確かにそういう方も在籍はしていますが、決してその限りではありません。
音楽を勉強して将来へ繋げたいと考えている若い音楽家たちの中には、様々な経緯の人々が存在しています。
今回は、その個性豊かな特徴をお話しします。
音楽大学に通う学生達は、大きく分けて4つの専攻のいずれかに所属していることがほとんどです。
一番人数が多いのが、楽器の演奏を専攻とする『器楽科』。
こちらにはピアノ、ヴァイオリンなどの弦楽器、フルートなどの木管楽器、トランペットなどの金管楽器、更にはドラムなどの打楽器も含まれます。
大学によっては和楽器科など他の楽器を専門とする科があることもありますが、演奏技術を磨いていくという意味で同じくくりとなります。
次に人数が多いのが、『声楽科』です。
ソプラノ、アルト、テノール、バリトンの声域に分かれ、日本歌曲からイタリア歌曲、オペラなどの研鑽を積んでいます。
そして、残る二つは『作曲科』と『指揮科』。
この二つは読んで字のごとく作曲や指揮をすることを学ぶ学科です。
ではこの4つの分類で、どのような特徴が見えてくるのでしょうか。
まず大人数の器楽科ですが、なかでもピアノやヴァイオリンなどの弦楽器を学ぶ学生は、幼い頃からその楽器を練習し先生に師事しながら成長してきた人がほとんどです。
物心つく前から楽器を習っているので、これは本人の意思というよりは保護者の希望で楽器を始めたと見てよいでしょう。
しかし、音大に入学するほどに音楽が好きになり技術も磨いてきたというのは、間違いなく本人の資質や努力の賜物です。
こういった学生のイメージが、世間一般の『音大生』だと言えるでしょう。
管楽器や打楽器を専攻とする学生について
それに対し、管楽器や打楽器を専攻とする学生は、そのほとんどが中学校や高校で吹奏楽部に入り楽器に触れた、という経緯の持ち主です。
それではピアノやヴァイオリン等に比べ、スタートが遅いのでは?と感じられるかもしれませんが、管楽器や打楽器はある程度の体格がないと演奏に適さないので、体が成長した小学校高学年〜高校生くらいから楽器を演奏し出すのは、むしろ合理的なのです。
こういった学生たちはお上品な音大のイメージよりも、吹奏楽部の『体育会系』な明るいキャラクターであることが多く、社交的で仲間意識が強い傾向にあります。
そして声楽科の学生ともなると、専門的な学習はほとんど高校生くらいからという人が多くなります。
というのも、男性は声変わりが終わってから、女性もある程度体格がしっかりしてからでないと、声楽の学習は難しいからなのです。
よく『声楽科は30歳を過ぎてから声が出来上がる』などと言われるほど、その技術は繊細で晩成型。
こちらも管楽器等と同じく明るく朗らかな人柄の学生が多く、健康的なイメージです。
そして、人数か少なめな作曲家と指揮科は、今までの学生達とは違った雰囲気があります。
こちらの二科は狭き門である影響なのか、何年も浪人をして入学したり他の大学で全く違うことを勉強してから音大に入り直す学生がいたりするので、比較的年齢層が高い傾向があります。
その分、人生経験や学んできたことの多さから、思慮深く個性が際立つ魅力的な人物が多いのが面白いところです。
どちらも先述の器楽科や声楽家とは違い、横の繋がりよりは『自分の内側との戦い』といった面を秘めている専攻分野なので、その人柄も個性的でユニークな学生が多いのが特徴です。
一口に『音大生』と言っても種類・タイプは色々
今まで上げてきた特徴はあくまで『こういった傾向がある』というもので、もちろん個人差があります。
しかし、専攻する科や楽器の種類などによって、ある程度の雰囲気や性格の特徴が重なってくるのも事実なので、面白いものです。
例えば、低音楽器や低音声部を担当する人は比較的穏やかな性格の人が多く、高音楽器担当の人は細やかな性格…などというのは、よく言われる説です。
そういった『楽器別人間学』の本も出版されているほど、その特徴は一致することが多く、『性格が楽器を選ぶのか』『楽器の特性が性格に影響するのか』といった議論は、演奏家達の中でも話題に上ることがあります。
いかがでしたでしょうか。
一口に『音大生』と言っても、その中には色々な種類・タイプの学生達がいることが、お分り頂けたと思います。
当然人間はみな個性や特性があるので、全ての学生について一概に言えることではありませんが、こういう傾向があるというのは面白いものです。
音楽大学と言うと何となく特別なイメージがつきまといがちですが、その中身は『音楽が好きで集まってきた学生達の集まり』なのです。
『上品そう』『世界が違いそう』などの印象だけで決めつけず、その中には多種多様な若い音楽家達が学生生活を過ごしているのだということに、興味を持って頂ければと思います。
最終更新日 2025年4月29日